ヒントは自分の歴史の中にあった。「ドラえもん」である。2020年2月、小山さんは東京ビッグサイトで開かれた第91回東京インターナショナルギフト・ショーに初めて出た。あの時。「平賢」のブースにふらりと入ってきた客が。「ドラえもん」を捺染した手ぬぐいの注文をくれたではないか。あの仕事は今でも続いている。
「販路を広げるには、展示会に出て小売り業界ややバイヤーの目に留まることだ!」
そう思いついた小山さんは2025年、イベントへの出店をやめた。もう、1枚1枚手売りする段階ではない! 唯一出し続けるのは、毎年11月19、20日に開かれる「桐生えびす講」だけにした。小山さんは桐生えびす講の世話人でもある。これだけはやめられないのだ。
そして展示会に積極的に出始めた。この年2月、東京・ビッグサイトで開かれた国内最大の展示会である東京インターナショナル・ギフト・ショーに出た。群馬県のブースの一角だったから出展料は15万円ほどである。3日間の開催期間中、300〜400枚の名刺が集まった。それだけの来場者が「平賢」に目を向けてくれたわけだ。だが、そのままではビジネスにまではつながらない。小山さんはその全てに丁寧なメールを送った。
「本日はお忙しいなか、弊社ブースにお立ち寄りいただきまして、誠にありがとうございました。
今回の展示会では弊社の商品や技術についてご紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか? 少しでもご興味をお持ちいただけたなら幸いです。
ブースでの説明ではお伝えしきれなかった特徴も多々ございますため、ご不明点等ございましたら、いつでもお気軽にご連絡ください。
簡単ではございますが、まずはご挨拶とさせていただきます。 今後とも何卒よろしくお願いいたします」
そして6月、同じ会場で催された「ライフスタイルWeek【夏】」という展示会のインバウンド向けグッズコーナーに出た。雑貨や文具、ファッション、美容、インテリア、食器の商談会である。こちらは独自の出展だったので100万円ほどかかった。
2月の東京インターナショナル・ギフト・ショーは突然思いついての出店だったので、ブースには「桐生手ぬぐい」を展示しただけだった。しかし、ほかのブースを見ると、ほとんどがきれいに印刷されたパンフレットを置いていた。
「そうか、そんなものも必要なんだな」
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| KIRYU TENUGUI ORIGINAL TENUGUI |
この頃の小山さんは「特注手ぬぐい」に可能性を見いだしていたらしい。これで準備万端整ったはずだった。ところが、ふらりとブースに入ってきた客がいった。
意表をつかれたが、考えてみれば当然である。展示会場に足を運ぶ人たちはオリジナルのグッズを作りたいという人ばかりではない。問屋さんにしても、デパートなどの小売り業の人にしても、
「売れるもの」
が欲しいのだ。彼らが求めるのは捺染業の「平賢」ではなく、手ぬぐいメーカーとしての「平賢」なのだ。そして展示会の性格からすれば、そういう人たちの方が多数派であるはずだ。
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| カタログ |
桐生に戻った小山さんはすぐにカタログ作りに取り掛かった。最初の2ページには「業界初 箔押してぬぐい」の見出しのもと、15の商品見本がフルカラーで掲載され、次ページからは「桐生てぬぐい」が丁寧にジャンル分けして並んでいる。
そして9月。再び東京インターナショナル・ギフト・ショーに出た。今度は桐生市のブースの一角である。「平賢」のブースに、「KIRYU TENUGUI ORIGINAL TENUGUI」とカタログが用意されていたことはいうまでもない。
こういうのを「こけつまろびつ」というのだろう。だが失敗を繰り返しながら小山さんは、「転んでもただでは起きない」を実行した。
この年。小山さんは10件を超える新規顧客をつかんだ。
写真=「平賢」は桐生えびす講にだけは出展を続けている


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