桐生の左官、海を越える 野村裕司さん 第14回 バカヤロウ!
左官という仕事に身が入り始めた。評判のいい左官だった父・角尾さんの技を盗み始めた。角尾さんは何も教えてくれなかったのだ。盗んだ技は建ちかかった家の押し入れの壁塗りで試した。ここなら多少失敗しても目立たないからである。 セ...
左官という仕事に身が入り始めた。評判のいい左官だった父・角尾さんの技を盗み始めた。角尾さんは何も教えてくれなかったのだ。盗んだ技は建ちかかった家の押し入れの壁塗りで試した。ここなら多少失敗しても目立たないからである。 セ...
やっと鏝(こて)を握らせてもらったのは1年ほど下働きを続けてからだった。といっても、左官の技の華である仕上げ塗りなどさせてもらえるはずもない。工事が終われば見えなくなる下塗りが野村さんに与えられた仕事だった。砂ふるい、材...
父・角尾さんは自動車の運転免許を持っていなかった。高校2年、16歳で軽自動車の免許を取った野村さんは、その頃から家の仕事を手伝ってはいた。学校が休みの日、軽トラックに左官仕事や道具を乗せ、現場まで運ぶのである。 だが、そ...