地方都市のタクシー革命 沼田屋タクシー
第11回 「MiTT」誕生

コト

アプリを作るにはそのアプリが代行する業務内容を詳しく知らねばならない。今氏さんと薗田さんは、沼田屋タクシーの下山さんと毎週木曜日を定例会議の日とし、デジタル無線によるタクシー配車を学んだ。
客の配車依頼は電話で営業所のオペレーターが受ける。コンピューターが自動的に客の電話番号を読み取り、ディスプレーに名前や住所を表示する。沼田屋タクシーの車両はGPSを搭載しており、それぞれの現在地がディスプレー上に表示されている。客が待っている場所に一番近い待機場所にいる車両を選び、ディスプレー上のその車両のアイコンをクリックすると、その車両に客の名前、待っている場所が自動的に送信される…。

10ヶ月ほど経った2024年の1月だった。今氏さんから小林さんに電話が入った。

「ご依頼いただいたシステムができました。とりあえず見ていただきたいのですが」

今氏さんと薗田さんが沼田屋タクシーにやってきた、そこで実演しようというのである。2人はノートパソコンを持参した。これが、いま営業所にあるデジタル無線による配車システムの中核になっているコンピューターに代わるものである。そして2人のスマートフォンには出来上がった配車アプリが入っていた。

「まず、スマホでLINEを起動します」

2人の説明はスマホの画面を見せながら始まった。

LINEのアプリがインストールされていることを前提とすると、「MiTT」を友達登録するのはQRコードを読み込むだけの簡単な作業で済む。スマホのカメラでそのQRコードを撮る。するとiPhoneの場合、画面に「○○をSafariで開く」などという通知が出てくるので、それをタッチするだけだ。スマホの機種によって多少の違いはあるが、難しい作業ではない。
こうして「MiTT」を友達登録すれば、LINEを開くと<MiTT>という項目が出る。これがLINEを使った配車アプリである。

その<MiTT>にタッチすると、「車を呼ぶ」のボタンが現れる。同じ画面には<使い方><電話で配車>のボタンもある。

<車を呼ぶ>に触れる。地図が現れ、自分の現在地が<+>で表示される。それを確認して画面上の<決定>ボタンに触れれば、目的地を聞いてくる。この画面にも地図があるので、その地図で指定してもいいし、目的地の住所を入力してもいい。あとは<この内容で配車する>のボタンに触れば、タクシーが到着するまでのおおむねの時間、そして運賃が表示される。やって来るタクシーの運転手に何か伝えたいことがあれば、それを書き込み、最終確認ボタンにタッチすれば作業は終わりである。あとはタクシーが来るのを待つだけだ。

<使い方>にタッチすると、「MiTT」の使用方法をYouTubeで詳しく教えてくれる。

<電話で配車>に触れれば、沼田屋タクシーの電話番号が表示され、そこをタッチするだけで電話がつながり、オペレーターにタクシーの迎えの車を頼むことが出来る。

説明がわると、実演が始まった。今氏さんのスマホで「MiTT」を開き、車を呼んだ。すると、ノートパソコンに今氏さんからタクシーの注文が来たことが表示された。それだけでなく、画面に現れた地図には乗車場所、降車場所、その間の走行ルートも現れた。

「ワォー、すごいな! 地図は出てくるし、これなら走行距離も明確だ。それに、ボタンに数回タッチするだけでタクシーが呼べる。えっ、客は地図上で迎えに来るタクシーが近づいてくるのを見ることが出来る? 素晴らしい」

小林さんと下山さんは思わず歓声を上げた。これなら、「GO」アプリと比べても遜色はない。いや、地方のタクシーにとっては、「GO」アプリより遥かに使いやすいのではないか。

今氏さんの説明はもう少し続いた。
スマホの画面に出てくる地図は、Google Mapを使っていること、LINEもGoogle Mapも一般的には無料で使えるが、ビジネスで使えば利用料が発生すること。

「これでよろしいでしょうか?」

小林さんはいま、これからの地方都市のタクシー事業になくてはならないと思い詰めていた配車アプリを目にしていた。自分のスマホにも「MiTT」を読み込んでみた。動く。簡単だ。小林さんはいま、発注者も桐生、製作者も桐生の、文字通りMade in 桐生の配車アプリを手に入れたのである。

「これで行きましょう。ありがとう!」

「MiTT」の原型が誕生した。

写真=「MiTT」を起動するとこんな画面が現れる

コメント