「平賢」の、静かなる暴走

群馬県桐生市の捺染業「平賢」の3代目、小山哲平さんの成長と熟成を追う。きっかけは「もう一度取材して書いてくれませんか?」という問いかけだった。鯉のぼりから撤退し、独自の金箔技法や斬新なデザインで手ぬぐいに新たな命を吹き込み、ついには「捺染」から離れて「作品」を染める。職人から作家へ進み、1本10万円の作品を完売させるまでの「静かなる暴走」。
第1回:価格決定権小山さんから再取材を依頼された著者は、3年前とは変貌した「平賢」を追う。まずは導入として、「桐生の職人さん」の1人として取り上げた変貌前の「平賢」を3回にわたって再録する。
第2回:ドラえもん捺染業「平賢」は、ギフトショー出展を機にドラえもん手ぬぐいの製作を依頼された。「平賢」の社名明示と自社販売を条件に引き受け、価格決定権を得て脱下請けを果たすとともにブランド化に成功した。
第3回:リバーシブル染色業の平賢で鯉のぼりに魅せられ職人となった小山さんは、下請け脱却のため手ぬぐいのデザインを開めた。裏表が異なるリバーシブルやグラデーションの新技法を開発し、手捺染の可能性を広げた。
第4回:群馬県ふるさと伝統工芸士小山さんは会社の営業の武器にするため、2024年に「桐生手捺染」の職人として初の群馬県ふるさと伝統工芸士に申請し、41歳の若さで一発合格を果たした。
第5回:肩書き小山さんは「群馬県ふるさと伝統工芸士」の肩書きに恥じぬ作家になろうと決意。着想をメモする日々を送り、2025年6月の工芸品展への出品に向けて新作の模索を始めた。
第6回:アインシュタイン小山さんは、伝統工芸士として型破りな一品ものの制作を決意。捺染の「型」を捨て、憧れのアインシュタインの名言を胸に、筆での手描きという無謀な挑戦に踏み出した。
第7回:5万円の手ぬぐい小山さんはアインシュタインの言葉等をモチーフに、落書きのような直感的な描画で伝統工芸品展向けの「一品もの」手ぬぐい2本を制作し、1本5万円の値を付けた。売れるのか?
第8回:2本完売!2025年6月の群馬県ふるさと伝統工芸品展で、小山哲平さんは絶対に売れないと思っていた5万円の高級手ぬぐいを含む60万円超を売り上げ、自らの作家性に目覚めた。
第9回:プロのデザイナー小山さんは自信がなかったが、依頼を受けるうちに他業種からも注文が舞い込む。謙虚な対価を得てプロの自覚が芽生え、「平賢」と共に大きく変わり始めた。
第10回:1本10万円高崎高島屋の群馬展に向け、小山さんは義妹の言葉に背中を押され10万円の手ぬぐいに挑戦を決意。温度を下げた捺染台で絵筆や金箔を駆使し、禅語「而今」を冠した渾身の抽象画を完成させた。
第11回:風伯雷公抜染と手描きを組み合わせた5万円の風神雷神図の手ぬぐい「風伯雷公」を制作。さらに、アインシュタインの名言をテーマに、「挫折と挑戦」「事実は真実の敵なり」と名付けた3万円の手ぬぐい2本を作り上げた。
第12回:高崎高島屋高崎高島屋の群馬展に出店し、義妹の後押しで出品した10万円などの高額な一点もの4枚がわずか4時間で完売した。問い合わせも相次ぎ、最終的に売上は120万円を記録して出店店舗中2位となる大健闘を見せた。
第13回:鯉のぼりからの撤退住宅事情の変化や少子化で鯉のぼりの需要が激減し、かつての屋台骨が赤字部門と化した平賢。先代の理解を得て鯉のぼりから撤退し、オリジナル手ぬぐいを中心とした経営へと舵を切った。
第14回:経営改革下請けを脱却した平賢は、特注手ぬぐいの受注の不安定さと、販路が見いだせない中で、週末イベントで手売りする。そのためが過密労働に直面する。業績向上と身を削る矛盾の打破が急務となっていた。
第15回:こけつまろびつ展示会への出店や失敗を通じ、メーカーとしての「カタログ」の必要性を痛感する。試行錯誤を重ねて商売の形を学び、「転んでもただでは起きない」執念で10件を超える新規顧客を獲得した。
第16回:生活雑貨専門店高額な費用や客足の少なさに失敗を覚悟した展示会だったが、大手雑貨店バイヤーからの問い合わせを機にオンライン商談が成立。金箔手ぬぐいが大ヒットし、追加注文が相次ぐ展開となった。
第17回:宗教グッズ展示会をきっかけに、「平賢」の金箔技術に注目した金蛇水神社社や出雲大社の土産物店から異例の受注が相次ぎ、神仏関連という新たな顧客グループを開拓し始めている。
第18回: