毎月1回、起き抜けの顔が毎回40人から50人集まった。その年の暮れまで10回続いた勉強会にはレストランチェーンや塾、ホテル向けパン製造の経営者など、桐生が誇る産業界の代表が次々に登場し、市職員に民間の考え方を伝えた。
「ざっくばらんな飲み会」は、群馬大学理工学部の教授とある市民の雑談から生まれた。桐生の産業界と最先端の研究を続ける理工学部に架け橋を作るには、まずともに酒を飲んで気心が知れなければならないとの趣旨で生まれた。初回は
「話をしなければならないから」
と10人強で始まったが、よほど酒の味が良かったのか、参加者が次々に仲間を引き入れ、50人ほどにまで膨らんで開催場所に困っていた。「PLUS+ アンカー」を知った1人が、
「あそこなら全員収容できる」
と相談に訪れ、定着した。その時から酒が飲めない貴志さんも「飲み会」の欠かせないメンバーになった。
「成果は求めない。しかし、単なる懇親会にはしない」
がモットーで、だからまだ具体的な成果はない。しかし、ここで知り合った数人がいま、群馬大学理工学部発のベンチャー企業「GUDi」に関わり、経営を軌道に乗せようと奮闘している。半年、1年後には「飲み会」の最初の成果に育っているかも知れない。
群馬大学理工学部が、最先端の科学を市民にわかりやすく解説する「サイエンスカフェin桐生」の開催会場が「PLUS+ アンカー」に定着したのは、「ざっくばらんな飲み会」がきっかけだった。「飲み会」に参加したある教授が、
「これまであちこち会場探しをしてきたが、ここが一番いい!」
と決めてしまった。
いやいや、これだけではない。婚活パーティも開かれた。手作りのアクセサリーやバッグ、レストランの出店が集まるマルシェも定期的に開かれる。「PLUS+ アンカー」の賑わいに、地元の本町6丁目商店街も目を向け始めた。商店街が20年ほど続けている「ふれあい市」を「PLUS+ アンカー」で開きたいとの依頼があり、2019年6月に実現した。合併して桐生市になった旧黒保根村の産品を集めた「ちっちゃな黒保根」も「PLUS+ アンカー」を会場に定期開催されて人気を集めいている。
「一番人気は黒保根産の卵です」
2019年7月には、朝食カフェも開かれた。黒保根の卵で卵かけご飯を食べようというのである。たくさんの市民が舌鼓を打った。
「PLUS+ アンカー」はいま、「私」の、「俺」の「PLUS+ アンカー」に脱皮し、桐生の活力を生み出す根拠地の様相を呈している。
写真:「PLUS+ アンカー」の夜。