歯磨き粉は「スーパーライオン」に限る。「タバコライオン」も使ってみたが、何が違うのかうまく繋がってくれなかった。
「ところがね、数年前に『スーパーライオン』が生産中止になって。あわてて150箱ほど買いだめしたの。あと80箱ぐらい残ってるかな」
中学生のころ、よじりの親方をしていた父・金子角之助さんからよじりの技を仕込まれた。
「これが出来りゃあ、食いっぱぐれがない」
父はそういった。
「修行は厳しかったかって? うーん、どうなんだろう。若かったからかねえ、数週間でつなげるようになっちゃったのよ」

だから、
——コツは何ですか?
と筆者が聞いても、
「さてねえ。3本の指で、こう絡めるのよねえ。縺れさせるというのかなあ」
単純で簡単な仕事とも見える。でも、ほかのよじり屋さんに作業を頼んだら、繋がっていない糸が沢山あったという機屋さんもいる。垂れ下がった糸がほとんどない石原さんの技は名人級なのだろう。
そんな話をしながら、石原さんはよじり続ける。繋ぐ糸は1時間に1000〜1500本。2、3秒に1本は繋いでいる計算だ。
写真:よじり作業中の石原好子さん
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