小黒金物店 第3回 独立へ
小黒さんの子どもの頃、桐生には機音が鳴り響いていた。いまはほとんど街から消え去った昔を懐かしみ、 「ガタン、ガタン、がチャ、ガチャというリズミカルな音でねえ。あれはジャズですよ」 という人もいる。機音を懐かしむ桐生...
小黒さんの子どもの頃、桐生には機音が鳴り響いていた。いまはほとんど街から消え去った昔を懐かしみ、 「ガタン、ガタン、がチャ、ガチャというリズミカルな音でねえ。あれはジャズですよ」 という人もいる。機音を懐かしむ桐生...
ぼちぼち注文が入り始めたのは、独立して5,6年たった頃である。 作るのは、習い覚えた鎌がほとんどだった。いつしか 「小黒の鎌は良く切れる」 という評判が生まれていた。教え込まれた技法に独学の工夫を加えた小黒さんは...
小黒さんの刃物は切れると書いた。切れ味が長持ちするとも書いた。 どんな作り方をすればそんな刃物ができるのか? 小黒さんの仕事を見た。 刃物作りは材料の切り出しから始まる。 普通の大きさの鉈を例に取る。最も一般的な鉈は13...
刃物は厚く作って薄く研げ。 これが刃物造りの原則である。 熱され、叩かれた鉄の表面は、小黒さんによると 「空気にさらされることもあって疲れてるんだんべ」 この疲れている表面は、研いで落としてやらないとまっとうな刃...
福島からバイクで乗り付けた高校生がいた。 「俺、鍛冶屋になりたいんです。伝統工芸士を目指してます。弟子にしてもらえませんか?」 ほう、福島からわざわざ、ね。しかも、まだ高校生で。どこで私を知ったのか? 悪い気はしな...