履きやすい靴、とは? クイーン堂シューズ 第9回 フィット

では、注文靴を作る職人だった曽祖父、祖父から引き継いだ経験知の上に勉強を重ねた小泉充さんはどんな靴を客に勧めるのだろう?
せっかくの機会である。

「街の信頼できる靴屋さんで靴を買うって、なんだかいいでしょう。ここ数年私のパンプス系の靴はすべて桐生のクイーン堂シューズさんで購入しています。この靴は気に入りすぎてリピート3足目」

などという声がSNSで寄せられるクイーン堂シューズのノウハウを充さんに聞いた。クイーン堂シューズまでは遠すぎて足を運べないあなたに、靴を選ぶ際の参考にしていただければ幸いだ。

☆足にぴったりフィットし、押さえ所がしっかりしている靴

 足が靴の中で勝手に動き回らない靴を選ぶことが基本である。そのためには、足を靴の中にしっかりと固定しなければならない。紐靴なら、足が痛まない程度に紐をしっかり結ぶことである。
ところで、女性が好むパンプスは、足を固定するポイントが2つしかない。下図のように側面と甲の部分である。

靴_NEW

この2つが足にぴったりフィットしなければならない。スカスカだと、かかとが抜けやすくなる。勢い、足裏全体で体を支えるのではなく、足の先とかかだけがその役割を引き受けることになる。指とかかとに負担がかかり過ぎ、様々な足の病を引き起こしかねない。

「それだけではありません。歩くたびに靴が脱げそうになるので、スリッパでも履いているかのように『脱げないように』歩くことになります。極端に言えば、靴を引きずって歩くことになる。そうすると、どうしても膝が伸びず、歩く姿勢が狂います。それだけなら見た目の問題にすぎないかもしれませんが、不自然な姿勢で歩き続けることになるので、やがては腰痛を引きおこす恐れがあります」

では、充さんはどんなパンプスを客に勧めるのか。

「まず、何足かのパンプスを履き比べていただきます。もちろん、その中に『この靴が合うはずだ』という1足を入れておきます。ポイントは、歩くたびに脱げそうにならないか、靴の中で足が滑らないか、の2点です。時折、歩くたびにかかとが靴から抜けかけている方を見かけますが、あれは靴が合っていません」

しかし、デザインも靴選びの重要なポイントである。足にフィットしていない靴を客が欲しがったらどうする?

「その場合は、まず詰め物をします。靴の特に緩い部分にクッションを入れて履いていただきます。それで修正が出来れば、ソールをはがしてクッションを下に入れ、ソールを貼り付けてお買い上げいただきます」

クイーン堂シューズに伝わる経験値を生かすわけだ。
それでも靴が足に合わなかったら?

「その際は、同じようなデザインでストラップがついたものをお勧めします。ストラップで足を固定して、足が靴の中で動き回るのを防ぐわけです」

☆チャックが斜めの靴を

スニーカーやハーフブーツには、履きやすくするためにチャック付きのものがある。履く時にチャックを空け、足を入れてチャックを閉める。

「そんな靴では、必ずチャックが斜めになったのを選んでください。上下一直線になっているのはよくありません」

と充さんは言う。
斜めになったチャックを閉めれば、靴は足の甲の部分をフィットさせ、足が靴の中で滑ることを防いでくれる。しかし、縦一直線のチャックは閉めてもどこも締めつけてはくれない。よほど足にフィットした靴でない限り、足が滑ってしまう恐れがある。

充さんはそう考えて客一人ひとりの足にぴったりの靴を勧めるのである。

写真=チャックが斜めになった靴

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