小黒金物店・目次

小黒金物店

鉄を叩き続けて70余年。全国でも希少な古来の「鍛接法」を守り抜く野鍛冶。ブランドや肩書きに背を向け、現場の使い手が求める「一生モノの切れ味」を追求。亡き息子の魂と共に火床に向かう。(全10回)

第1回:手鉄を鍛え続けて70余年。小黒さんの手には、火傷の跡と黒い鉄粉が刻まれ、指は槌を握る形のまま曲がっている。刃物産地ではない桐生で孤高の技を磨き、名だたる専門家たちが絶大な信頼を寄せる。その「手」が語る鍛冶職人を追う。
第2回:鍛接鉄と鋼を叩き合わせる古来の技法「鍛接」を貫く小黒氏。量産可能な複合材が普及する中、あえて手打ちに拘るのは、圧倒的な「切れ味の持続性」を信じるからだ。全国でも希少となった最高級の打刃物を生み出すその技は、70年の経験に裏打ちされている。
第3回:独立へ14歳で刃物の本場・三条へ修行に出た。厳しい徒弟生活で難度の高い鎌作りを習得し、20歳で桐生にて独立を果たす。しかし、1人で炉に向き合う中で直面したのは、師の不在という壁だった。数多の失敗作を捨てながら真の職人への道を歩み始める。
第4回:増えた小黒ファン「良く切れ、長く持つ」と評判を呼んだ小黒さんの鎌。その技は農具から山仕事の道具、特殊な特注品へと広がり、全国に熱烈なファンを生んだ。機械化が進む現代でも、1人ひとりの使い勝手に寄り添う「野鍛冶」は、盆正月も休まず鉄を鍛え続ける。
第5回:小黒さんの仕事(上)鉄と鋼を一体化させる「仮付け」から、鉈の形へ追い込む「火造り」まで。温度を見極め、自家製の鍛接剤を用い、スプリングハンマーで不純物を叩き出す。理想の切れ味を求め、鉄の分子配列までも整える緻密な工程。ようやく掴んだ熟練の勘が宿る。
第6回:小黒さんの仕事(下)刃物の命を決める「焼き入れ」。小黒さんは温度計に頼らず、夕闇の中で鋼が放つ「夕焼け色」だけを信じて急冷の時を待つ。数値化できない熟練の勘が、折れず曲がらず、驚異の切れ味を持つ「本物の道具」を生む。
第7回:一人だけの弟子唯一の弟子として跡を継いだ愛息・充さん。伝統的な技に加え、鉄の造形作家としても類まれな才能を開花させた。しかし1999年、44歳の若さで急逝。小黒さんは「手順間違い」と愛息の死を悼み、遺された作品を形見として店に飾る。
第8回:押しかけ弟子2015年、小黒さんのもとに1人の医大生が現れる。趣味の範疇を超えた熱意に、弟子を取らぬはずの小黒さんも心を開き、技を伝授。最新機器さえ凌駕する「職人の勘」に魅せられた若者は、医師として働きながらも伝統を継ぐ決意を固める。
第9回:私と小黒さん著者が小黒氏と出会ったきっかけは、医大生・斉藤さんの熱心な紹介だった。取材を通じその技に惚れ込み特注したナイフ。「使ってほしい」と代金を受け取らない小黒さんに、著者は愛飲の銘酒を贈った。
第10回:いろいろな客遠方から評判を聞きつけ、小黒さんの包丁を求めてやってくる料理人たち。ブランド品より安価なため、稀に価値を疑う客もいるが、「多くの人に使ってほしい」と価格を上げない。肩書きや値段にではない道具の「真価」を知る人を支え続ける。