履きやすい靴、とは? クイーン堂シューズ
第6回 外反母趾

クイーン堂シューズ

小泉充さんに、靴の履きやすさとは何か、と聞いていると、何度も外反母趾(がいはんぼし)の話が出た。足にピッタリ合った靴を履かないと外反母趾になりやすい。だから靴は慎重に選ばなければならないというのだ。

外反母趾とは足の親指の付け根が、小指側に「く」の字に曲がってしまった状態をいう。患部が腫れたり強い痛みを持ったりする。一般的には遺伝や、先が細くとがった靴を履き続けることが原因だといわれる。
ところが、小泉さんは

「選んだ靴が足に合っていないのです。特に、細い足の人がやや緩めの靴を選んでしまうとなりやすい」

と断言した。

靴はつま先からかかとまで、足にぴったりフィットしているのが最も快適なはずだ。ところが、前にも書いたように人の足は千差万別である。だから、一部はピッタリだが、ほかの部分は足に合わないということが頻繁に起きる。そのような時、多くの人がやや緩めの靴を選んでしまうというのだ。
理解できないことではない。私がバリーの靴を買った時のようなものだ。あの時、甲の部分がピッタリとフィットした靴を選んでいれば、ほかの部分は足に合わず、ブカブカの状態だから、歩くたびにかかとが靴から脱げ落ちそうになるだろう。そのどこが外反母趾を引き起こすのだろう?

靴は、中に入った足が前に滑り込むのを防ぐように設計されている。下の図のように、親指と小指の付け根がストッパーになるのだ。ところが緩めの靴を選ぶと、親指と小指の付け根の周りが靴より細いため、ストッパーとして働かない。絞り込まれている靴の前部に足が滑り込み、指が押し付けあって靴の形に合わせて曲がってしまう。中でもパンプスなどヒールが高い靴だと、かかとが高いから足全体が前に滑り、指、特に親指は常に曲がりっぱなしになってしまう。それが外反母趾を引き起こすのである。

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「だから、足に合った靴を選ばなければならないのです。そうすれば、親指と小指の付け根がストッパーになって足が前に滑り込むことを防ぎ、親指の付け根が『く』の字型になることがないので外反母趾を防ぎます」

これから靴を選ぶときに、ぜひ思い出していただきたいポイントである。

そして困るのは、外反母趾になってしまった人は、曲がった親指の付け根が靴に触れると痛むため、大きめの、あからさまにいえばブカブカの靴を選びがちなことだ。その靴の中では常に足が滑ってあちこちに動くため、外反母趾をさらに悪化させてしまう。

クイーン堂シューズにも、外反母趾で悩むか客が来る。大きめの靴を選ぼうとする客に、充さんは必ず声をかける。

「それだと、さらに外反母趾を悪化させてしまう恐れがありますよ」

しかし、客は大きめの靴でなければ患部が痛むから大きめを手に取る。外反母趾で出っ張ったところに合わせて靴を選ぶから、必ず大きめの靴になるのだ。

充さんが説得し始めた。足は靴の中では滑ってはならないこと、緩めの靴を履き続けたから親指と小指の付け根でできるストッパーが働かず、狭くなったところに足が押し付けられて曲がってしまうこと…。

「こうしたらいかがでしょう。外反母趾になってしまった親指の付け根のほかは足にぴったり合う靴を選んでいただきます。そして、出っ張ってしまった親指の付け根の部分の革を伸ばします。こうすれば快適な靴になります」

充さんによると、こんな説得を続けると半数以上の客が納得してくれるそうだ。充さんは少し我慢してもらって全体が足にフィットする靴を選び、外反母趾が当たる部分の皮を広げてお買い上げいただいた。

数ヶ月して、その客がやって来た。嬉しそうである。

「先日はありがとうございました。実はこの間旅行に行ったんです。あの靴を履いていったんですが、1日中履いていても全く大丈夫でした。痛くなかったんです! おかげで助かりました」

こうした客がクイーン堂シューズの固定客になるのはいうまでもない。そして、クイーン堂シューズの熱心な伝道者になってくれるのである。

写真=クイーン堂シューズの看板

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