桐生の職人さん・目次

桐生の職人さん

1300年の歴史が培った技は桐生の宝物。
半径わずか数kmの町には職人たちの、世界でも希なこれだけの技がある。
桐生は、過去を織る町ではない。未来を縫う町だ。

▶ はじめに

古澤整経目の付け所

古澤整経

断熱材で包んだ工場で温湿度を徹底管理し、最新鋭機を独自にカスタマイズ。最後は夫婦二人の目で1万6000本の糸を点検する。
下山縫製ほかがやらない仕事

縫製一筋の熟練工たちが、極薄のシルクから厚手のニットまで、生地の特性を見極めながら丁寧に縫い上げる。
今泉機拵所確認、確認、確認

今泉機拵所

ジャカードの指令を綜絖へ伝える「架物」製作。1万本に及ぶ通じ糸を、極限の集中力で組み上げる。機屋の使い勝手を最優先した独自の工夫を施す。
高橋デザインルーム「星」にかける

高橋デザインルーム

デザイン画を織機の組織図へと翻訳する「意匠」の第一人者。熟練の勘と、1万分の1の「星(マス目)」の書き間違いも許さない緻密な仕事を続ける。
周東紋切所金棒と楯を持った鬼

周東紋切所

「紋紙」製作の第一人者。元ITプログラマーの技術力で最新鋭機さえも解析して独自のソフトを開発。無理難題を形にする産地の知恵袋。
大塚パンチング「117クーペ」

大塚パンチング

刺繍データを設計する「パンチング」の第一人者。デジタル化された現代でも、手作業の温もりを感じさせる「極限の曲線」を追い求める。
中島メリヤス手編みの技をいまに

中島メリヤス

ポロシャツの「部分品」に特化した専業メーカー。緻密なライン合わせなど、手動編み機の精神を継承する職人技は高い評価を受ける。
石原好子さん指先に宿る技

石原好子さん

数万本の経糸を1本ずつ指先でよじり合わせる「つなぎ」の達人。機械でも不可能な、繊細な糸の繋ぎ合わせを完璧にこなす。
Tex.Box「加工屋のおっちゃん」

Tex.Box

「ニードルパンチ」の先駆者。一流メゾンのデザイナーたちが、澤の生み出す「まだ誰も見たことがない布」を求めて桐生へ足を運ぶ。

松平鉄工所

「抜き型」の一品もの専門。0.1ミリの精度で鋼を曲げる技術は、桐生の多品種少量生産には欠かせない。
大東プリーツシワの美

大東プリーツ

唯一無二の「エスニック・プリーツ」を開発。機械への深い知識を武器に、他社には真似できない立体美を創り出した。

星野サイジング

経験頼みだった糊付けに科学的測定を導入。最新素材にも「断らない」姿勢で挑み、産地・桐生を影で支える。
蛭間シャーリング刈り取る

蛭間シャーリング

徹底した工程管理で「事故ゼロ・納期厳守」を実現。古い業界慣習を打ち破り、産地の近代化を牽引する。

2. 伝統を更新する挑戦者たち

周敏織物
金襴を現代に
日本に数台といわれる7200口の巨大ジャカードや高速レピア織機をいち早く導入。金箔フィルムを経糸に用いる「機械化された佐賀錦」の技法を自社装置の開発で確立した。京都の問屋からも「周敏に頼めば間違いない」と絶賛される1000色以上の糸を駆使した色彩感覚が強み。
ナガマサ
縫製業→ブランドメーカー
長年の縫製技術を武器に、ブランド「Season off」を展開。流行を追うのではなく、着心地の良さ」を基準に、伸びないジャージやリブ袖のシャツなど、ありそうでなかった「一生もの」を追求する。東京・日本橋の「コレド室町3」でのポップアップショップでは、高い接客力と確かな品質で実績を上げた。
須裁
120%ということ
2026年に創業120年を迎える老舗。、電子ジャカードをいち早く入れ、意匠データの内製化も実現。数日で試作を仕上げるスピード感と、一歩踏み込んだ「お節介な提案」で厚い信頼を得る。高速織機でのオールシルク織りや、難素材である銅繊維、和紙糸の製織にも挑戦する。
喜多織物工場
一徹
夏用の透ける生地「紗(しゃ)」や「絽(ろ)」が専門。糸に負担をかけない旧式織機を自ら木製パーツで改造し、唯一無二の広幅・高密度な生地を産み出す。1,500本以上の「ふるいの糸」を手動で微調整しながら、トリアセテートをシルクのような手触りにまで昇華させる。
桐生絹織
3種の経糸
「絶対に織れない」と言われるような素材・太さ・性質の異なる複数の糸を組み合わせる難解な注文を「やってみましょう」と引き受ける異彩の機屋。3種の異なる経糸を同時に制御する高度なテンション管理や、毛羽立ちを抑える撚りの技術を駆使し、7〜8割の本発注率を誇る。
アライデザインシステム
織物で「絵画」
経糸と緯糸の交差を「ドット」と捉え、写真や名画を寸分違わぬ精細さで再現する独自技術「絵画織」を確立した。12色の緯糸を4層に重ね合わせ、数万通りの色の重なりを手作業で設計する緻密なプログラミングは、もはや職人芸の極致。
トシテックス
布のマジシャン
織物の中に「羽」や「金属チェーン」を閉じ込める独創的なテキスタイルを生み出す。常識では「不可能」とされる注文にも、自作の装置や緻密な計算で挑み、三宅一生をはじめとする世界的デザイナーの想像力を刺激し続けている。
坂井レース
ラパゴスの逆襲
遮熱率71%という驚異の性能を、極細繊維と格闘する職人の執念で実現。日本独自の「多機能カーテン」を武器に、インド国鉄10万両の採用など世界市場へ打って出る。
泉織物
糸を創る
「市販の糸では理想の着物が織れない」と、数百種の絹糸を独自の感性で組み合わせ、100種類を超える「泉織物にしかない糸」を開発。機屋の常識を覆す糸作りが、唯一無二の布地を生む。

3.[染める]:色彩と化学の4名

天然染色研究所
色の移ろい
元染色会社の技術専務としての化学知識を駆使し、経験と直感に頼っていた伝統的な草木染めを現代の技法で再構築。「日本の四季の色」40色を復元するなど、失われつつあった平安の色彩を鮮明に蘇らせた。庭の枇杷の葉で愛娘の晴着を染め上げるなど、家族の記憶と自然を色で繋ぐ。
平賢
枠を越える
鯉のぼりや祭半天で培った伝統の「手捺染」を武器に、アウトドアブランドやドラえもんとのコラボを実現。表裏で柄が異なる「リバーシブル手ぬぐい」や、あえて色を重ねる技法など、職人の固定観念に縛られない発想で次々と新機軸を打ち出す。
ホリスレン
化学を極める
日光にも水にも、塩素にさえも屈しない最強の「スレン染料」を専門に扱う染色工だ。熟練の職人でさえ「最後は勘が頼り」という神経質な染料を自在に操る。11回もの試作を経て掴んだ信頼を武器に、日本最大の刺繍糸メーカーを支える。

小池染色

「絹なら小池」と称えられる綛染め(かせぞめ)の守護神。三原色から無限の色を産み出すため名画に学び、糸の性質を見極めてセリシンを落とす「精練」に心血を注ぐ。独自の「糸張り」で織りやすさまで担保する、色彩と気遣いの職人。

4. [刺繍]:針目に魂を込める

大澤紀代美さん
ミシンの職人
横振りミシンを自在に操る刺繍作家でありながら、幼少期からの工具愛が高じ、複雑なミシンの修理・調整まで自らこなす。ミシン台の水平や針棒の微細なズレ、釜の剣先の磨きに至るまで、職人の勘と水準器を駆使して「最高の音」を引き出す。
シャオレ
180台の特殊ミシン
180台もの特殊ミシンを自ら分解・改造し、他店が匙を投げる極薄生地や難加工を次々と完遂する。ミシン屋さえ断る複雑な調整を「機械職人」としての直感と論理で解き明かし、イッセイミヤケら世界的デザイナーのこだわりを形にする。

5. [その他]:新たな価値と伝統を繋ぐ

金加
背中を押されて
ベッドマット用キルティング加工。既存の機械では不可能な「5cm厚の4辺縫い」や、職人の腱鞘炎を救った「自動糸切れ補修機」など、世界初の機械を次々とメーカーと共同開発。買継商から機屋、そして加工業へと進化を続け、生地の無駄を極力省く「225cm幅マシン」まで導入した。
和裁を独自のマニュアル化と分業制で近代的な教育体系に再構築。親子二代で「現代の名工」を受章。二代目・成雄さんは、共衿を裏返して縫う「回し掛け縫い」を考案し、熟練の勘に頼っていた難工程を誰もが美しく仕上げられる技法へと昇華させた。
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